あとで後悔しない「いい家」の建て方 BESTHOUSE

第三章 業者選びのポイント6 経営理念


会社の存在価値はここで決まる

 『経営理念』は、ホームページを含め、業者の選考段階だけでなく商談時にも確認すべき事項です。

 世の中には、会社を起業しても、10年以内に90%以上の会社が倒産しているというデータがあります。その理由は、倒産してしまう会社には強い存在意義がないからだと私は考えます。

『なぜこの会社は、社会にとって必要なのか』
『この会社は、社会に対して何を与えていくのか』

 そういったことが曖昧な会社は、経営を長く続けることは出来ません。しっかりとした経営理念を持っている会社がお客様の支持を受けます。業績を伸ばしている会社には、すぐれた経営理念という裏付けがあるのです。

 例えば、居酒屋チェーン『和民』で有名なワタミ株式会社は『地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう』というスローガンのもと、100年以上存続できる企業を目指しています。

 私自身も経営者としてさまざまな企業の経営者とお会いするのですが、人気のある企業はいずれもこのようなしっかりとした経営理念を持っています。

 会社の教育やサービスは、その会社の理念から生まれます。

『家づくりで御社が大切にされていることは何ですか?』

 この質問に明確に答えられるかどうかが試金石となるでしょう。会社によっては、理念を社内に掲げていたり『クレド』(会社の信条や行動指針を簡潔に記したもの)を作成しているので、それらも参考になります。

経営者と直接話すのも有効

 また、経営理念を知る上では、経営者に直接会ってみるのが一番です。大手メーカーの場合はなかなか難しいかもしれませんが、一般的な中小企業であれば、経営者に直接会える確率は高いでしょう。

 経営者に会社の理念を尋ねて心に響く回答が返ってくるようであれば、よいスタッフを育てているだろうという推測も出来ます。
経営者の想いにスタッフが共感することでチームワークがよくなるものだからです。

 経営者と直接話をするなかで『しっかりとした企業理念に基づいた信念を感じるか』『人に好まれる性格か』『スタッフはその経営者の考え方についていくだろうか』『リーダーシップ、プロの提案を感じるか』『情熱的か』『企業努力を続けているか』『クリエイティブな考え方をしているか。
旧態依然の考え方を持っていないか』『心身は健康的か』など、さまざまなポイントを確認しておきましょう。

いい会社に共通するスタッフへの姿勢

 また、しっかりした経営理念を持つ会社は、共通してスタッフを尊重しています。
 例えば、楽天株式会社の社屋には、『楽天食堂』というカフェテリアがあり、この社屋で働く人であれば、派遣社員、アルバイト、警備員でも朝食と昼食を全品無料で食べられるといいます。
これもスタッフを尊重する姿勢の1つと言えます。

 大企業だけでなく、小さな企業でもスタッフを尊重している会社はたくさんあります。
 ベストセラーになった『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)に登場する会社はいずれも社員とその家族の幸せを第一に追求しています。

 その一つであるチョークの製造を行う日本理化学工業は、社員の7割が障碍者でありながら、市場の3割を確保する優良企業です。
社員が助け合いながら仕事をする姿に、働くことの意味を再認識させられます。

社会貢献という側面から判断する

 それから、日本理化学工業のお話にも通じますが、経営理念のある会社の多くは、社会貢献活動にも積極的です。

 カンボジアに学校をつくる、地域の町会で掃除のお手伝いをする、会社を地域のサークルに無料開放する、文化活動する・・・など、規模の大小こそあれ、何らかの取り組みをしている会社は少なくありません。

 ちなみに私の会社でも障害者雇用を行っています。社員が全員でフォローし合おうという雰囲気も生まれており、会社にとってもプラスになることが多いのを実感しています。

 そもそも経営が悪い会社は余裕がないので、社会貢献活動をしようとは思いません。それどころか無理な営業を続けてお客様の信頼を失うという悪循環に陥ることもあります。

 『何か社会に役立つ活動をされていますか?』

 と聞くことで、経営者の意識がわかります。何かを実践している会社の場合、そこに共感している従業員がいることもわかります。

 経営理念を持つ会社は、基本的に行動がぶれません。ちょっとした問題が起こっても、経営理念という原点に戻って考えて行動するので、確実に解決することができるのです。

 ですから、経営理念が明確な会社を選択することが、家づくりを成功に導くための近道になるのです。