あとで後悔しない「いい家」の建て方 BESTHOUSE

第三章 業者選びのポイント7 価格提案の仕方


不安を先取りしてフォローしてくれるか

 次は「価格提案」です。ここでは「価格への不安を打ち消す提案をしてくれるか」がポイントとなります。
 新聞折り込みの住宅チラシなどの広告に「坪単価25・8万円」などという表記を見たことがあると思います。そのため、私のお客様にも「坪単価はいくらですか?」と問い合わせる方がいらっしゃいますが、実はこの質問にはあまり意味がありません。
 「坪単価」と言っても、実際には建物本体以外の工事を別料金で追加するパターンがほとんどです。最終的には当初の金額を大幅に上回ることも珍しくありません。
 安すぎる坪単価を謳っている業者があれば、単純にそのような金額ではできないという。前提で考えるべきでしょう。
家は坪単価ではなく「全体の金額」で考えるのが原則です。ですから「坪単価はいくらですか?」ではなく、

 「全体でいくらかかりますか?」
 「この金額に含まれない工事には、どんなものがありますか?」

といった質問をぶつけてみましょう。率直に、

 「私はお金の面が心配なんですけど、どうしたらいいでしょうか?」
 
 と、あえて大ざっぱに質問してみるのもよいかもしれません。信頼できる業者であれば、予算をしっかり意識した上で提案をしてくれるものです。
 お客様の視点で対応してくれる業者かどうかは、お金の対応に顕著に表れます。これは担当者と会話をしていればある程度つかめるはずです。よい担当者はお客様の心配を自分と置き換えて考えるものです。

 お客様の不安を先取りしている担当者は「この工事をするとこれだけお金がかかるので、当初の予算である○○円からオーバーしてしまいます。どうしましょうか?」
 といった説明をするはずです。また、お客様の要望に対してコストのかからない提案をしてくれたりします。
 私たちの会社では、価格表示を行う際には、一般的に別途扱いである諸経費もすべて含んだ金額をお伝えしています。これによって、先日もお引き渡しをしたお客様から「予想以上に安くていい家ができた」とおっしゃっていただきました。誰もが、家づくりは後から追加請求が発生するものだと考えています。そんな心の底にある不安を払拭するのが、望ましい価格提案です。

「売る」意識の強い業者には注意

 その一方で、契約のノルマに追われている担当者は、「とりあえず今ご契約をいただいたら、3Dテレビをさし上げます」
 などと、その場限りの対応をしがちです。
 そのような業者は、「売る」という意識が強い業者です。しかし、これは正しい営業のあり方とはかけ離れています。「お客様にとって一生のうちで一番高い買い物である」と理解している担当者は、決して無理な営業はしないと思います。
 私の場合、お客様に1つのプランを提案するときに、総額がわかるような説明をしています。
 具体的には、①本体の価格、②お客様から変更があったときの金額、③諸経費の3つが一目でわかるように書類を作成します。
 また、プランが変更された場合は、早い時点で、変更後の金額を迅速にお伝えするようにしています。それによって、お客様は常に総額が把握できるので安心です。
 逆に、価格の提案が遅い、変更に対する価格の説明がない業者には要注意です。
 「プランが変更になったときは、価格をすぐに伝えてもらえるかどうか」を確認して、「すぐに伝える」と回答するような業者とお付き合いするのをおすすめします。

自分の予算の基準をしつかりと持つ

 お金に関しては、業者の提案に一方的に従うのではなく、自分自身でしっかりした基準を設けておくことも肝心です。そのためにライフプランと資金計画が大切です。
 例えば、電化製品を購入する際に、予算内で必要な機能を満たした商品が手に入れば満足できるに違いありません。これは家の購入でも同じです。自分が望んだ金額で家ができたなら、それが本当に満足できる家の価格ということです。
 私か実際にお客様を見ていても、ある程度の根拠に基づいて自分の予算がしつかりしている人は、予算オーバーになりにくい傾向があります。
 ある程度のはっきりとした希望価格を持っていれば、それが家づくりの前提となります。業者側としても、「その希望に応えられるか」という考えで商談を進めてくれます。
 しかし、肝心の予算をあいまいにして、「あの設備もいいし、この設備もほしい」という話の進め方をすると、価格はどんどんつり上がるばかりです。
 いずれにせよ、家づくりですべての要望を満たすのは不可能です。ですから「1番目~3番目くらいの要望は絶対に死守する」というくらいの心構えで臨みましょう。このときの1番目の要望を「価格」にしておくことが大切です。