あとで後悔しない「いい家」の建て方 BESTHOUSE

第二章 『家づくりの本』は数冊読み比べるのが基本


 書店に行けば、実用書のコーナーに家づくりに関する本が何冊も置かれていると思います。気になったタイトルの本をパラパラと立ち読みしてみて、必要と思われる情報で、読みやすいと感じたものを何冊か購入するのをお薦めします。

 ここで知っておきたいのは、書籍はそれを書く人の経歴や背景に大きく左右されるという事実です。

 例えば『〇〇工法』の専門家が本を書いたならば、『家は〇〇工法で建てるのがベストだ』と書くはずです。

 これは、いい悪いという以前に当然のことだと思います。誰でも自分の仕事に自信を持っていれば、自分の仕事を一番よいものだと主張するものだからです。

 そのため、1冊しか本を読まないと『そうか、〇〇工法が一番すぐれているんだ。それ以外にはあり得ないな』という短絡的な結論につながりかねません。

 ですから本書を含めて本は何冊か読み比べて、偏りなく情報を集めるべきです。何冊も読んでいくうちに、確実に家づくりについての知識が積み重なるでしょう。そして、自分なりに情報の良し悪しについて判断ができるようになります。

 私が接するお客様の中にも、時々専門家ばりに詳しい人がいらっしゃいます。ただし、情報全体のバランスが整っているかというと、そうでない場合がほとんどです。

 とはいえ知識を身につけたお客様は、私達プロがどれくらいの知識を持っているかをある程度の範囲で見抜くことができます。プロの立場としては、相手がたく さん情報を持っていれば、うかつなことは言えなくなります。その意味でも、情報はできるだけ多く仕入れるに越したことはありません。

『実務経験があるかどうか』も要チェック

 それから、書籍を選ぶ際には、著書ができるだけ現場に近い立場から書いた本を選ぶと良いでしょう。私は仕事柄、家づくりに関する本はこまめにチェックしているのですが、建築業界で実務経験のない人が書いた本からは、実際の現場についてあまり知らなかったり、学説的な印象も受けたりします。

 学者やコンサルタントが書いた本をすべて否定するつもりはありません。ただ、書店で本を選ぶ際には、著書のプロフィールを確認すると良いと思います。

 その著書が何冊本を出しているかではなく、『どういう働き方をしてきたのか』『どれだけ現場に近い立場にいるのか』というポイントで選ぶと、良い本に巡り合う確率が高まると思います。

 私は、多くの経営者の会合に参加しますが、やはり、そうした中でも一番心に響くのが叩き上げの経営者の話です。これは、本でも同じことが言えます。