あとで後悔しない「いい家」の建て方 BESTHOUSE

第三章 業者選びのポイント15 商圏の設定


住宅会社の守備範囲は決まっている

 商圏とは特定のお店や会社にとって、サービスの及ぶ地域の範囲のことです。商圏エリアは、会社によって違います。
 ただ、人口の少ない過疎地では5万部のチラシを配るのに車で1時間くらいかかるのに対して、都内では自転車で15分の範囲内で5万部のチラシが捌けてしまいます。地方の場合は高速の次のインターチェンジまでが商圏という場合もあります。
 重要なのは「会社にとって無理のない範囲で、フォローをしているか」です。建てた後の家は、例外なくアフターフォローとしての「メンテナンス」が必要となります。商圏を限定している会社は、必然的にアフターフォローのことを視野に入れた上で営業活動をしていることが想像できます。
 私の会社を例に取ると、車で最大1時間程度で行けるエリアを商圏にしています。それ以上の距離になると、どうしてもメンテナンスなどに出かける腰が重くなります。無理のある距離まで商圏にしてしまうと、いざお客様から問い合わせがあったときに、対応が遅くなりがちです。
 片道1時間半かかったとすると、往復で3時間となり、作業時間を含めると1日がかりの仕事になってしまいます。交通費なども含めると、お客様にとっても金額的な負担となり、不利益になってしまいます
 ですので、そうした経験から建築工事は、地域に即したものでないと厳しいと思うのです。同じ修繕を行うのであれば、近くであればそうしたことも起こりませんし、時間的にもすぐに対応できます。遠ければ、人間の心情から考えても、緊急性を要しない場合、時間的に比較的余裕の取れるときに、ということで後回しにされてしまうかもしれません。
 ですから商圏については商談時などに確認しておきましょう。

「御社に商圏はありますか?」
「商圏の範囲はどれくらいですか?」
「その範囲を設定したのはどうしてですか?」


 などのように質問をしてみましょう。「こういう理由があるから、商圏はこれくらいです」と明確に説明してくれる会社は信用が置けると思います。
 大事なのは、明確な理由で商圏エリアを定めていて、アフターフォローをしっかりしてくれるかどうかです。
 アフターフォローのための商圏エリアを設定しているかをチェックしてください。地域に根ざした会社は、地域のお客様を大切にしていることがわかります。

メンテナンスを前提に考える

 仕事が取りたいだけの営業マンは「どこでも建てに行きます」と言いがちです。
 なかには、自分の作品をつくりたいという理由で東京にいながら京都の家を設計、受注し分離発注することもあります。
 家を建てるだけならそれでもいいのかもしれませんが、後のフォローはどうなるのでしょうか。きっと後々になってお客様が困ることになると思います。
 本当にお客様の立場に立っている業者であれば、無理に受注しないはずです。もし、私か遠方のお客様からお問い合わせをいただいたとしたら、「アフターフォローは鈍るおそれがあるので、了承してください。それでOKであればお受けします」とはっきりお伝えするでしょう。
 家は必ずメンテナンスが必要な商品です。
 どの業者も「アフターフォローはしています」と答えるかもしれませんが、本当にフォローできる条件なのかを確認しておくと、表面上の言葉に左右されずに判断できるようになります。