あとで後悔しない「いい家」の建て方 BESTHOUSE

第三章 業者選びのポイント8 専門性・得意分野


「なんでも建てます!」の問題点

次のチェックポイントは「得意分野・専門性の確認」です。例えば「木造でこういう建物を建てたいのですが......」と相談した後に、

「御社では鉄骨で建てることができますか?」
「鉄筋コンクリートでは建てられますか?」
 
 などと質問をしてみてください。つまり「同じ建物で構造体を変えて建てることは可能か」を聞くわけです。
 すると、仕事がほしい会社は「建てられます」「ぜひ見積もりをさせてください」と回答するかもしれません。しかしこの「何でも建てます」という姿勢には問題があります。何でもできるという会社は、どの工法が得意なのかがわからないからです。
 一般的に見れば、どれも同じような「建物」として認識されているかもしれませんが、工法によって家づくりの工程や段取りはまったく異なります。
 例えば、木造と鉄骨では現場管理からすべてが違います。木造の現場管理の知識で鉄筋コンクリートの管理ができるかというと、難しいものがあります。
 建築というのは、すべてを網羅するにはあまりにも複雑すぎる世界です。つまり、すべての工法に熟知するというのは、ほとんど不可能なのです。
 もちろん会社によっては専門部署を持っていて、2つの工法をメインにしていることもあるでしょう。必ずしも1つの専門性に絞っていなければいけないということではありません。
 しかし「あれもこれもできます」という会社は避けたほうが無難でしょう。
 専門性のない工法で工事が進むと、施工などにしわ寄せがいく可能性が高まります。不必要なところにたくさんの職人が入ってしまい、コストがかさんだりすることもあります。

無駄な仕事をしていないかを確認しておく

 専門性の確認と併せて「得意分野の実績」の確認もしておくとよいでしょう。これは、過去の施工例や建築進行物件数の確認をするということです。
 例えば、私の会社では木造の住宅を専門として、近隣地域で複数の現場が同時に進行しています。このように、同じ工法で複数の現場を管理していれば、同じような品質の家が、同じような形で安定して提供できることにつながります。
 一方、ここは無理をして受注した鉄骨の現場、ここはいつもの木造の現場、となると、仕事の進め方に無駄が生じます。
 これを確認しやすいのが現場確認と言えます。施工実例の写真などだけでなく、やはりその会社がいつも建てている家を確認するのがわかりやすいと思います。
 何回か見学することで、いつも同品質の家が建てられていることがわかれば、自然と納得できるものです。見学会などを開催していない会仕の場合は、施工中案件などをいくつも確認させてもらうとよいでしょう。
 何事もそうかもしれませんが、仕事は余分なことをしないのが最も効率的です。1つの工法で専門性を高めていけば、仕事の質もどんどんよくなっていき、余計な時間もかからず、コストダウンにもつながります。
 無理な仕事は、コストアップにつながります。くれぐれもその会社の専門性・得意分野を確認しておきたいところです。