あとで後悔しない「いい家」の建て方 BESTHOUSE

第二章  成功のポイント5 間取り


 最後に間取りについてお話しましょう。

 家の間取りをどうするかというのは、家を建てる人の多くが、大きな関心を寄せている問題です。

 理想の間取りを追求したいという気持ちはわかりますが、理想の間取りは自分だけが知っているわけではありません。そのことを事前に理解しておく必要があるでしょう。

 理想の間取りを自分では知らない。これはいったいどういうことでしょうか。

 よく、間取りを設計するに当たって、住宅会社の営業マンや設計者などが、お客様に要望を聞くことがあります。
 『ご主人の書斎は6畳くらいが希望でしょうか』
 『お子さんの部屋も6畳くらいでしょうかね』
 そうやって、お客様の要望を聞いて間取りを決めていくのが一般的に思われるかもしれませが、私はこのやり方がベストではないと考えています。

 本来、間取りを決めるのは、プロである住宅会社の担当者(営業マンや設計者)の仕事です。単純に要望を聞くだけではなく、『ヒアリング』をする、つまりお客様ご自身でさえ気付かなかった要望を引き出すことが目的でなければならないということです。

 例えば、お客様はダブルベッドに寝ているのか。あるいは畳に布団を敷いて寝ているのか。また、どういうテレビやパソコンを使っているのか、そのテレビやパソコンを置いている家具の大きさはどれくらいか・・・・。そういった細々とした情報から、間取りが決まっていきます。

 そういったことをヒアリングせずに間取りを設計したら、どうなるでしょう。実際にベッドを置いて、デスクを配置したら、ここの窓は必要なかったなどということも起こり得ます。

 また、実際に家具を置いた時に、必要なところにコンセントがないなどという初歩的なミスが発生することもあります。

 間取りは、その家庭で使っている家具の種類や大きさ、生活パターンなどから決まってきます。それをきちんと住宅会社に理解してもらえるかどうかが、家づくりを成功に導くカギとなります。

間取りは過去の生活スタイルから生まれる

 私の会社では、『生活チェック表』というものに基づいてお客様に質問をしています。

 そこには、お客様の身長、来客の頻度、ペットの有無や種類、食事は椅子か着座か・・・といった項目はもとより、主な朝食、料理する人、得意料理といった細かい項目も含まれています。

 一般的には、あまりここまでヒアリングしません。では、なぜここまで細かく尋ねるのかというと、ういった細かい情報から、お客様ご自身が気付いていない間取りの方向性が見えてくるからなのです。

 よくよく聞いていくと、部屋をつくることが目的ではなくて、趣味の品を収納する場所が欲しかったということもあります。

 それは、趣味は何かと、どういう時間にその趣味に没頭しているのか、どれくらいスペースを使うのか、といったことを深く深く掘り下げた後にたどり着くことです。

 多くの場合は、お客様の未来の希望について、ヒアリングが行われています。しかし、本当に確認しなくてはならないのは、お客様自身の生活習慣などの込み入った過去についてです。

 ヒアリングとは、お客様の生活に深く入っていく行為です。その家庭にとってみれば、これまでの生活を深く理解してもらうことで、未来を提案してもらうということです。

 もちろん信頼関係がないと、おいそれと自分の生活を他人に教えたいとは思わないでしょう。ベストな間取りをつくる上でも、信頼できる会社と出会うことが大切ということです。

5つのポイントを左右するのは『業者』

 さて、ここまで『いい家』づくりを成功させる5つのポイントについてお話してきました。

 1つめの『情報収集』は、書籍、イベント・セミナー、インターネットなど手段は様々ですが、いずれも家づくりのプロから情報を得ることになります。

 しかし、一言で『プロ』と言っても、様々な角度から様々な情報を発信しています。
たくさんの情報と接していくうちに、どの業者が信頼できそうかが自分なりにつかめてくると思います。

 2つめの『スケジュール・段取り』は、具体的には家づくりを依頼する住宅会社とのコミュニケーションを通じて決定していくものです。

 すでにお話したように、すぐに家を建ててくれる会社がよい会社とは限りません。
信頼できる業者であれば、『家を作るタイミングはまだ先ですよ』と言ってくれることもあるでしょう。

 お客様の将来にわたる人生プラン、あるいは老後から次世代も見越したスケジュールを考えてくれるかどうかもカギとなります。

 3つめの『資金計画』は、なんと言っても自分の身の丈に合った家を考えることが大切です。

 夢のマイホーム実現のために、無理をしてローンを組む。その結果、ローン返済のために働き詰めの生活を送ったり、楽しみにしていた家族旅行を諦めざるを得なくなる。

 一方、資金計画に合った家を建てて、家族がそろって仲良く暮らす。どちらがハッピーなのかは、比べるまでもないでしょう。

 家づくりを託すのであれば、資金面やライフプラン面で親身なフォローやアドバイスをしてくれる会社がベストです。

 そして、4つめの『構造・素材』ですが、工法については住宅会社によって得意・不得意があります。自分がどういう家を作りたいかを、まずしっかりと見極めることが肝心です。

 その上で、安全対策や環境対策に、積極的な会社であるかどうかをきちんと確認しておきたいところです。
もちろん、予算の範囲内でプランを考えてくれるかどうかが前提条件となってくるでしょ。

 そして5つめのポイントである『間取り』ですが、これもお話したように自分がどう暮らしてきたかという『過去』をしっかり理解してくれる会社を信頼してお任せするのが最も近道ではないかと考えています。

 ときには自分の家族構成や、趣味趣向、また、定番の食事のメニューまで、全部をさらけ出して話し合うこともあるでしょう。
深く信頼できる会社との共同作業であるからこそ、理想の間取りが出来るということです。

 これらを見てもわかるように、いい家をつくるためには、住宅会社との付き合い方が重要となってきます。

 信頼できる業者かどうかは、住宅雑誌を見ていたり、インターネットによる見積書の入手を繰り返しているだけではわかりません。
 まずは事前に予備知識を身につけること。そして実際に担当者と会った時に効果的なコミュニケーションを取ること。この2つによって、住宅会社の本質を驚くほど的確に見極めることができるのです。