あとで後悔しない「いい家」の建て方 BESTHOUSE

第二章 耐震対策は最優先に考えるべき


 次に、家づくりの構造や素材を考える上で、どこにポイントを置いたら良いかを、もう少し掘り下げてみましょう。

 家の条件として、何よりも優先されるべきは『安全性』です。言うまでもなく、日本は世界的な地震国です。1995(平成7)年の阪神・淡路大震災では、数千人の尊い命が、一瞬で自分の家の下敷きになって失われたという事実があります。

 家は、家族の安全や笑顔を守ってこそのものです。ですから、仕上がってからでは目に見えない安全を確保するための『構造』に、優先的にお金をかけるべきだと思います。

 とはいえ、地震対策のためだけに200万円や300万円のお金を捻出するのは、なかなか難しいものがあります。

 そこで私は、低価格での地震対策に力を入れています。震度7クラスの大地震が起きても、震度4~5の揺れに抑える制震の技術を提供し、それに30年の保証をつけるという取り組みや、免震、断震などの提案を行っています。

 私達の会社だけではありません。お客様の目線に合わせて、低コストでの地震対策を行っている会社は存在します。

 家づくりに置いては、価格と価値が伴った技術提供をしてくれる、そういった会社を選ぶのがよいでしょう。

健康基準は自分の目で見ても判断できる

 住宅関連の書籍の中には、『化学物質を使っている家は危険だ。住宅には自然素材を使うべき』とするような記述を目にします。

 シックハウス症候群の問題が取りざたされるようになってから、住宅の化学物質に対する目が厳しくなっているのは確かでしょう。

 そういった影響もあってか、『ビニルクロス(ポリ塩化ビニルを主原料とする壁紙)は使いたくない』『新建材(プリント合板、ビニルタイルなど、新しい材料や製法でつくられた建材)は身体に悪いから心配です』と言うお客様もいらっしゃいます。

 確かに、私が職人として働いていた当時は、現場で鼻がツーンとすることがありました。化学物質の何らかの影響があったのではないかと言われれば、否定できない面はあります。

 しかし現在では、現場に行ってもそのような違和感を覚えることはありません。

 今の環境基準は、以前に比べて厳しいものになっています。有毒な化合物であるホルムアルデヒドを発散する建材は、発散するレベルによって☆の数でランク付けされています。

 このうち、最上位規格である『☆☆☆☆(Fフォースター)というのは、最も発散レベルが低いと認められたものです。この認定を受けた建材は、建材基準法によって使用量が制限されません。こういった基準によてって、建材の有害性は大きく改善されているのです。

 ですから、私がアドバイスしたいのは、『自然系素材がベスト』という言葉をそのまま鵜呑みにするのではなく、実際に現場に行ってみて、自分自身で確認することです。

 化学物質がダメだという人は、現場に行くと確実に違和感を訴えるので、現場を確認するだけで判断出来ます。

 もしそこで問題を感じなければ、新建材を使った家でも大きな問題はないと私は考えています。私の会社の見学会にも、アレルギー体質のお客様が確認のために いらっしゃることがあります。そうしたお客様の住宅が完成した後に『事前に見学会で確認しておいて安心した』とお話されるのを聞くこともあります。

 あとは、予算との兼ね合いです。基本的に自然素材は、コストが割高という現実があります。自然素材にこだわると、当初の予算をオーバーしたり、計画に無理 が生じることもあり得ます。予算をしっかりとかけて自然素材を採用できれば、より快適に過ごせることでしょう。しかし、何度も繰り返しますが、家だけがすべてではありません。バランスを考えて選択することが大切だと思います。

断熱材はどれを選べばいいのか

 昨今、記録的な猛暑が大きなニュースとなり、異常気象を感じさせられました。アスファルトの上の温度は摂氏50度を超え、今後の家づくりを考えると、家自 体で暑さに対応するような工夫が必要になってくると思います。また、寒冷地域では、冬場の寒さへの対応が変わらず求められます。

 建物の冷暖房効果を高めるには、断熱材を用いてエネルギーロスを防ぐのが一般的です。

 断熱は『外断熱』か『内断熱』か、などというのを誰でも一度は耳にした経験があるでしょう。

 断熱材は『断熱』という言葉を使ってはいますが、実は熱を通します。熱の伝わり方には、対流熱、伝導熱、輻射熱の3種類があります。

 断熱材が対応しているのは、対流熱と伝導熱の2種類です。熱の伝わり方の75%を占めると言われる輻射熱には、現在の断熱材は基本的に対応できていません。だから断熱材ではなく、『熱伝導遅延材』などの表現が実像に近いのではないかと思います。

 一般的な断熱方法は断熱性能を向上させることで、もちろん一定の効果はありますが、熱を通すという性質上、外の気温よりも家の中の気温が熱くなってしまい がちです。猛暑だった夏の例で言うと、一般的なうち断熱の場合、外が摂氏35度であっても家の中は40度近くになってしまう。家の中折茂外が涼しいという 状態が起きているわけです。

 そういう輻射熱に対応できていない、というのが今の断熱材の特徴です。それを反射させることができるのがア ルミです。そこで今、私たちは熱を反射させるという家を建てています。熱を反射するので、外の気温の影響を限りなく受けずにすみます。これによりコストも 最小限で、夏はエアコン一台で快適に過ごせるような家が実現しています。そして、冬場も気密性が高く、エアコン一台で暖かい家でもあります。

 高性能な『断熱』を求めると予算もかかるという考えが一般的ですが、安くても熱を通さない家が建てられるという事実は知っておいていただきたいと思います。

 以上、4つめのポイントとして構造・素材について簡単にご説明しました。
『この素材は最高です』『この素材じゃないと家を建てる価値はありません』住宅会社によっては、このような売り文句で、自社の素材をおすすめしようとするかもしれません。

 しかし、構造や素材については、あくまでも予算とのバランスで選ぶことが大切です。
確かにお金をかければ、いくらでも高級な素材を使うことが可能です。しかし、お金をかけることだけが、いい家をつくる条件なのでしょうか。

 私が考える本当にいい家とは、その人の予算や将来の生活設計に合っている家です。
予算の範囲内で、素材をアップグレードするのは構いません。ただし、無理をして高級な家を建てても、将来的なことを考えると、本当にいい家と呼べるかどうかは疑問です。

 ですから、重要なのは自分にとって合ったいい家をつくってくれる業者を見つけることなのです。