あとで後悔しない「いい家」の建て方 BESTHOUSE

第一章 お客様の喜ぶ顔が見たい 〜 私の家づくりの原点


 ここで少し私自身についてお話をしたいと思います。私は元々職人として建築業界に入りました。

 その中では、これまで紹介してきたような業界が抱える負の部分もたくさん見てきました。自分が仕事をしていた先の元請け会社が倒産したこともあり、公共事業に携わったり、大手の建築現場で下請けとして仕事した経験もあります。

 そこで感じたのは、先ほど述べたように「お客様の存在を意識していない」という問題でした。自分中心に仕事をする職人がいたり、仲間と良好なコミュニケーションが取れずにケンカ状態で仕事を進める現場も目の当たりにしました。

 それでも仕事は順調に受注していましたから、そのまま下請けとして続けるという選択肢もありました。抱える職人の数を増やして事業を拡大することも可能だったかもしれません。それで安定した収入を得られるのであれば、自分でリフォームや新築を手掛けるようなリスクをおかす必要はないからです。

 それでも自分の気持ちの中では、どうしても納得できないものがくすぶっていました。
お客様に直接接して、お客様のために努力することで感謝されるような環境で働きたいという気持ちが強くなっていったのです。

親方の後ろ姿から「顧客満足」を学んだ

 私が理想としていたのは、最初に仕事を教えてくれた親方の仕事ぶりでした。その親方は、夜中の2時や3時に呼ばれて修繕工事に出向いたりしても、それでいて高額な工事費用を請求するようなことは決してしませんでした。

 当時は「顧客満足」という言葉は一般的ではなく、親方自身も「顧客満足」などという言葉を口にすることはありませんでしたが、そこで行われていたのは紛れもなく相手の立場を想った顧客満足のための仕事だったのです。

 私は、大手の仕事などを全部やめて、一番お客様に近いところで、直接発注を受ける仕事をしようと決めました。

 常にお客様の顔を見ながら、その人のために一生懸命仕事がしたい。感謝の気持ちをお客様と分かち合いたい。そのために独立して工務店を立ち上げたのです。