あとで後悔しない「いい家」の建て方 BESTHOUSE

第一章 家づくりは、失敗から学ぶことがたくさんある


 家を建てたい!!こう考えている人の多くが、家づくりにたくさんの夢と希望を抱いていると思います。

 住宅雑誌や『お宅訪問』といった趣向のテレビ番組を見ていると、さまざまなこだわりを持った魅力あるお宅が紹介されています。開放感のあるリビング、アンティークな家具が似合う趣味のアトリエ、ロフトの付いた子供部屋・・・どれも住む人のこだわりが反映されていて、個性豊かです。自慢のマイホームを紹介する人の顔は嬉々としていて、ご家族の表情もとても幸せそうです。

 それを見て、あなたも「こんな家に自分も住みたい」「自分だったらこんな間取りにしたい」などと夢を膨らませるところかもしれません。もちろん私は、家づくりに理想を持つことを否定するつもりはありません。私も家づくりに携わる人間の一人として、お客様の夢の実現をお手伝い出来れば、これ以上の喜びはないと考えています。

 しかし、夢と理想を抱いてこれから家づくりを考えようとしているあなたに、私はあえて「ちょっと待ってください」と言いたいのです。のっけから冷水を浴びせるようで恐縮なのですが、まずは家づくりをめぐる現実を知っておいていただきたいのです。
 「家は一生に一度の買い物」という言葉をよく耳にします。たしかに家を建てようとする大多数の人にとって、家づくりはI度きりの、やり直しが利かない体験です。>
 例えばレストランでまずい食べ物を注文してしまったのなら、「失敗したね」「勉強になったな」などと笑ってすまされるかもしれません。
 あるいは購人した電化製品がすぐに故障してしまったときには、すぐに返品すれば新品と交換してもらえるかもしれません。
 しかしこれが家となると、買ったあとに問題に気づいても、そう簡単にはいきません。場合によっては、不満を抱えながらその家に住み続けなければならないのです。
 だからこそ、誰もが家づくりに失敗したくない気持ちが強いと思いますが、現実には家づくりについての知識が足りなかったばかりに、大きな失敗につながるケースがあります。

失敗は情報不足から起きている

 私は住宅業界の知り合いや、お付き合いのある職人さんを通じて、家づくりの悲しい失敗例を耳にすることがあります。それだけでなく、私のところに家づくりに失敗してしまった人から直接相談を寄せられることもあります。

 こうした事例を見聞きしながら痛感したのは、問題は「情報不足から起きている」ということでした。多くの人は理想の家を思い描くことに夢中で、家づくりに「どういう失敗があるのか」「なぜ失敗が起きてしまうのか」ということをあまり知りません。

 一方住宅業界の側も、本当にお客様のことを考えて冷静なアドバイスをしてくれる会社ばかりではありません。なかにはお客様の夢や理想をあおるだけあおって、無理な契約にこぎつけようとする身勝手な会社も存在します。

 これは逆に言えば、失敗についてあらかじめ知っておけば、トラブルの多くを未然に解消できるということです。それだけでなく、もっといい家をつくるためのヒントも見つけることが出来ると思います。

 そこで実際に起きた家づくりの失敗例をいくつか紹介していきます。そして「どういう失敗があるのか」「なぜ失敗が起きてしまうのか」を考えていきたいと思います。

 失敗事例を知っておけば、これから思い描く家の形も、本当にご家族が望んでいた理想に近づくと私は信じています。