近年、免震住宅の考え方を進化させた住宅として、断震住宅というものが登場してきました。これは空気の力で基礎から上の部分を持ち上げて、揺れを断つ「エアー断震」というシステムを用いたものです。 このシステムは簡単に言うと、二重の基礎を作っておき、地震の揺れを感知すると、その基礎の間に空気を入れる仕組みです。そのため重さ100トンもあるような一戸建て木造住宅を一瞬で浮かせることができます。一般的には、震度3~4を感知すると浮上するように設定されています。家そのものを浮かせるため、大地震が起きても揺れを感じないというわけです。 地震波には、P波とS波の2種類があります。P波は地震が起きたときに最初に発生する初期微動を指します。S波は、P波のあとに発生する主要動(大きな揺れ)を指します。 携帯電話などで受信する緊急地震速報は、P波を観測して得た情報をもとに、S波が到着する前に伝えるという仕組みです。 このエアー断震は、P波を感知して作動するように設定されています。そのため大きな揺れを伴う地震が起こった際も、家の中では、ほとんど大きな揺れを感じることなく過ごすことができます。 東日本大震災のときには、このシステムを設置したすべての家で正常に作動し、十分に機能したことが報告されています。実は、先年新築したばかりの私の実家も、その中の一軒です。 そもそも私か、エアー断震というシステムを知ったのは、これを開発した会社のホームページを見たのが最初でした。 一見して画期的なシステムだと感じたのですが、とにかく開発者に会って話を聞くことにしました。連絡を取って、すぐに先方の会社まで出かけたのです。開発者の説明を受けることで、よいシステムであることを実感しました。 エアー断震は、コンプレッサーという圧縮空気を作る機器から空気が送り込まれますが、このコンプレッサーもホームセンターで売っているような一般的なものです。また、万が一、エアーもれがあった場合は、コンプレッサーが回りますので音で知らせてくれます。 先ほど、免震装置はシンプルな仕組みが望ましいとお伝えしました。このシステムも、まさに「空気で家を浮かせる」というシンプルな原理で成り立つものであり、私の考えるシンプルな仕組みの優位性とも合致していました。 そもそも、普通の免震装置は、地震が起きてみないと実際に作動するかどうかわかりません。「今回は想定外でした」と言ったところで、一度受けてしまった被害は取り返しがつかないのです。 しかし、エアー断震の場合は、実際に機能するかどうか、スイッチを入れるだけで日常的にチェックすることが可能です。 総合的に見て、すぐれたシステムではないかと考え、私の会社でも取り扱うようになったのです。

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