あとで後悔しない「いい家」の建て方 BESTHOUSE

第三章 業者選びのポイント4 相見積もり


数にこだわりすぎるのは逆効果

 『相見積もりは判断基準としてしっかり取るべき』という考え方が一般的ですが、それよりも大切なのは事前に業者を見極める視点を養うことです。

 信頼できる会社が提案する価格は、信頼できるものであるはずです。ですから、優先順位としては見積もりを依頼する以前に業者を絞り込むのが先決です。

 相見積もりは、最低限のリスク回避に過ぎません。しかし、これまでお話してきたように、確認すべきポイントはたくさんあります。

 家づくりの依頼を考えている会社が、『金額はどうにかします』などと価格競争に乗ってくるようなら警戒したほうがよいでしょう。

 いい家づくりをしている会社は、それだけ人気があるわけですから、むやみに価格競争に参加する必要がありません。実は優良会社は、価格だけで判断するお客様をお断りしていることが多いのです。

  私自身、優良会社とされる同業経営者の会合などに参加した際、相見積もりについてどう考えられているか話題に上がることがあります。ほとんどの経営者は、 過剰な相見積もりの競争には一切参加しないという答えが返ってきます。というのは、過剰な価格競争や相見積もりをしている段階で、本人も気づかないうちに 優良会社と縁がなくなっている可能性が高いわけです。

過度な相見積もりが手抜き工事につながることも

 一方、激しい相見積もりの結果は、消費へ の弊害となってお客様自身に返ってくることもあります。単価が安くて手抜き工事になるケースも存在します。私も建て売り住宅の修繕や雨漏りの修理に行って いた経験がありますが、一昔前は手抜き工事が窺えることが非常に多かったのを記憶しています。

 最悪の場合、価格競争に敗れた会社が倒産することもあります。こうなると、仮に家が建ったとしても、アフターサービスが望めなくなります。それどころか、契約直後にその会社が倒産したという、泣くに泣けないケースも実際に起こっています。

 また、業者側の立場としては、たくさん見積もりを取っているお客様に対しては仕事のモチベーションが上がらないのが正直な気持ちではないでしょうか。

 営業マンも人間です。『どうせ価格でしか判断してもらえないのだろう』と思うと、力も入りにくいのが正直な気持ちだと思います。これでは、いざという時に親身になって対応してもらえない可能性も生じます。

 過剰な相見積もりは、最終的に自分自身の首を絞めかねない行為です。見積もりをたくさん取ることは、家づくりの優良会社の情報をたくさん集めることとは違います。

 自分が望む価格帯に合わせ、お願いしたい業者の見当がつけば、相見積もりを取る場合はせいぜい2~3社で十分だと言えるでしょう。