あとで後悔しない「いい家」の建て方 BESTHOUSE

第三章 業者選びのポイント1 業者の種類


どんな会社が、どんな家を建てているのか

 住宅の業者はいくつかの種類に分けられ、それぞれの特徴や家づくりの方法が異なります。まずは、どんな住宅会社があるのか、自分はどういう家を建てたいのか、自分が建てたい家をつくってくれる業者はどのタイプかを知ることが大切です。
 代表的な業者には、工務店、設計事務所、ハウスメーカー、フランチャイズなどがあります。それぞれの特徴を簡単におさらいしてみましょう。

地域に密着した工務店

 工務店は、一般的には地域に密着した小規模な住宅会社を指します。工務店に大工さんや左官屋さんが所属しているわけではなく(一部には「工務店」を名乗る職人さんの集団もあります)、お客様から注文を受けて、関係する職人さんの協力を得ながら施工を進めるのが一般的です。
 工務店は、設計と施工を一括管理しているので、比較的お客様の意向が反映されやすいというメリットがあります。価格としては比較的安いという傾向がありますが、工務店の規模によってばらつきがあるのが現状です。
 また、伝統的な技術力を持つ工務店が存在します。デザインカが劣るとも言われていましたが、近年ではデザイン性と技術力を兼ねた工務店も多くなっています。

設計事務所に依頼する場合の注意点

 設計事務所は、家の間取りなどの設計を行います。設計には、綿密な打ち合わせが必要なため、十分な時間を確保しておく必要があります。逆に言えば、打ち合わせを通じて徹底的に自分のこだわりを表現したいということであれば、設計事務所に依頼するのは1つの方法と言えます。
 ただし、施工をする会社とは分離しているケースが多いため、お客様の意向が現場に反映されないといったトラブルが起こることもあり得ます。
 コストに関しては、一般的な広さの一棟の家に対して100~300万円前後の設計費がかかります。そこから工務店で施工するという段取りのため、割高になることを理解しておく必要があります。

ハウスメーカーは比較的コスト高

 ハウスメーカーは、全国的に展開している規模の大きな住宅会社です。住宅展示場を所有しているケースも多く、テレビCMなどを通じて「○○ホーム」「○○ハウス」といったブランドが広く浸透しています。
 ハウスメーカーの強みは、研究開発力にあります。オリジナルの商品を持ち、どこから見てもその会社の家というのが一目でわかるのが特徴の1つです。品質は標準化され、欠陥も少ない反面、テレビCMや住宅展示場などにかかる多大なコストが家の価格に反映されるため、割高な傾向は否めません。
 こうしたハウスメーカーを選ぶ方の多くは、「ブランド志向」であると言われています。とくに大手企業に勤務している方は、安心感を求めて大手メーカーを選ぶ傾向にあります。コストが高くても、ブランドで選びたいということであれば、それも1つの価値観だと思います。
 ところで、知らない方も多いと思うのですが、ハウスメーカーに依頼をしても、実際に家を建てるのは地元の工務店です。つまり、工務店が大手メーカーの下請け業務を行っているというわけです。
 先日、大手メーカーの住宅を手がけている会社の経営者とお話しする機会があったのですが、建築の現場に行くとお客様から「あんたたちが家を建てるのか?」と驚かれることがあると聞きました。お客様はハウスメーカーに所属する職人がいると考えているので、地元工務店の人を現場で見かけると違和感を覚えるというわけです。
 その経営者は、「私たちにはお客様との接点は基本的にありません」ともおっしゃっていました。職人さんはお客様の顔を知らないし、お客様も誰が自分の家をつくってくれるのか理解していない。「みんなで一緒に家をつくる」という想いを共有しにくいという現実は理解しておくべきでしょう。

ローコストメーカーの価格設定の理由

 ローコストメーカーとは、その名のとおり低価格を売りに住宅を提供するメーカーのことです。これはハウスメーカーとどう違うのでしょうか。
 大きな違いの1つは、発注の仕組みです。
 ハウスメーカーは下請けの工務店に業務を依頼し、工務店を通じて職人さんに発注します。一方、テレビCMなどでよく見かけるローコストメーカーは「直接発注」といって、工務店を通さずに管理者から直接職人さんに発注しています。発注の経路を一部中抜きすることで、低価格を実現しているのです。
 ほかにも、お風呂やユニットバス、洗面台、建具といった「商品」を安値で大量に仕入れる、あるいは納まりが統一化されることで職人単価を安く抑える、なども低価格の理由です。
 ただし、注意点を挙げるとすれば、坪単価だけに注目しないことです。その値段でできる工事範囲以外に、諸経費は別途になっている場合がほとんどです。総体的にいくらかかるかをしっかりと把握する必要があります。

フランチャイズという形態もある

 フランチャイズとは、契約をすることで、有名なメーカーの屋号を使用する権利を得ている工務店のことです。コンビニエンスストアなどのフランチャイズ方式などと同じようなものと考えればイメージしやすいかもしれません。
 フランチャイズ契約を結んだ工務店は、本部メーカーの商品を利用したり、資材が調達できるなどのメリットがあります。
 大手ハウスメーカーほど大規模ではないのですが、全国各地に店舗があり、比較的名の知れたブランドで家をつくってもらえるという安心感があります。
 その代わり、契約した工務店は加盟金やロイヤリティを支払わなければならず、建物にもコストが反映するので、やや割高感はあります。

どの業者を選んだらよいのか

 工務店やメーカーの特徴ははっきりしているので、そのなかで自分は何を選ぶかを明確にしておきましょう。
 とはいえ、小さな会社でもいいかげんな仕事をするところは存在しますし、「商品を売っているだけ」というアフターケアの意識の低い大手メーカーもあります。
 そこで選考基準として大事なのは、「顧客に対してどのような接し方をしているか」です。その業者の「お客様との接し方」を見るように心がけましょう。
 どんな業者でも、実際に会ってみるとたいていは建てるまで丁寧な営業対応をしています。ですから、注目すべきは「建てた後の顧客との接し方」です。
 その業者が一軒のご家庭に対して、「建てるだけでいい」という意識なのか、ずっと長くつながりを持っていくという意識なのか。建てた後の接し方で考え方が推し量られます。
 例えば、事前に興味のある業者のホームページでチェックしてみてください。そうした情報のなかに、建てた後の顧客との良好な関係を紹介するようなものがあったら、ある程度評価してよいのではないかと思います。