あとで後悔しない「いい家」の建て方 BESTHOUSE

第一章 住宅業界の一部は遅れた体質を持っている


 ここまでほんのわずかですが、家づくりの失敗例をお読みになって、どのような感想を持たれたでしょうか?家づくりに対して不安に思われた方もいらっしゃるでしょう。また「住宅業界ってひどい業界だ!」と思われた方もいらっしゃることでしょう。

 残念ながら、住宅業界は他の業界に比べて遅れているのは事実です。
 
 昭和期の寅さん映画などを見ていると、建築現場のシーンが登場することがあるのですが、そこに描かれている職人さんの恰好や現場の景色は、現在とほとんど変わっていません。ただ見た目が変わらないだけでなく、私には体質的にもそのころからあまり変わっていないように感じられることがあります。

 例えば、職人さんはよく「納める」という言葉を口にします。適当な言葉に訳すと「仕上げる」というニュアンスに近いでしょうか。

 家づくりでは、設計した人が最終的な完成形を完全に理解していないということがあります。細かい部分は図面にも描いていなかったり、図面通りにはいかないケースもあり、最終的には職人さんの腕で仕上げることになるのです。

 そのようなとき「最終的には職人が納める」という表現をすることがあります。職人さんが自分の技量でもって完成させるという意味です。よく言えば、職人さんが最後まで責任を持つという解釈もできるのですが、逆に言えば職人さんが「仕事を納めてやっている」という意識にもつながっている感じも時として受けます。

 私自身、職人さんの口から「最終的には俺たちが納めるんだから・・・」という趣旨の発言を耳にすることがありました。そんなことを言っているから、この業界は遅れているのだと反論したくなったものです。